棚卸資産の評価に関する会計基準についてご説明します。

棚卸資産の評価方法
棚卸資産については、原則、購入代価または製造原価に運賃等の付随費用を加算して取得原価とします。また、次の評価方法の中から売上原価への払出原価と期末棚卸資産の価額を算定します。
(1)個別法
(2)先入先出法
(3)平均原価法
(4)売価還元法

通常の販売目的で保有する棚卸資産の評価基準
通常の販売目的で保有する棚卸資産は、取得原価をもって貸借対照表価額とし、期末において正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、正味売却価額をもって貸借対照表価額とします。取得原価と正味売却価額との差額は当期の費用として処理します。
正味売却価額の下落のみならず、営業循環過程から外れた滞留品や処分見込の棚卸資産についても、以下のように収益性の低下の事実を適切に反映するように会計処理します。
(1)帳簿価額を処分見込価額まで切り下げる方法
(2)一定の回転期間を超える場合、規則的に帳簿価額を切り下げる方法

製造業等の原材料では、正味売却価額より再調達原価のほうが把握しやすいケースもあり、その場合には再調達原価が採用できます。

収益性の低下の判断及び簿価切下げは、原則として個別品目ごとに行います。継続適用を条件として、複数の棚卸資産を一括りとした単位で行うことが適切な場合には、当該方法を採用できます。実務上は個別品目ごとに行うのが一般的です。
前期に計上した棚卸資産評価損は、洗替法と切放法を棚卸資産の種類ごとに選択適用できます。実務上はデータ作成から仕訳入力までのフローを考えると洗替法が一般的です。

トレーディング目的で保有する棚卸資産の評価基準
トレーディング目的で保有する棚卸資産は、時価をもって貸借対照表価額とし、時価評価差額は、当期の損益として処理します。

開示
棚卸資産評価損は売上原価として表示し、棚卸資産の製造に関連するものは製造原価として処理します。
重要な事業部門の廃止、災害損失の発生に起因する臨時の事象かつ多額の棚卸資産評価損は特別損失に計上します。これについては、洗替法を適用していても、棚卸資産評価損の戻入を行いません。
トレーディング目的で保有する棚卸資産に係る損益は、原則として純額で売上高に表示します。

【参考】企業会計基準委員会 企業会計基準第9号
棚卸資産の評価に関する会計基準

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