会社法では、取締役の報酬、定款に定めていないときは、株主総会の決議によって定めるとされています。実務上は、株主総会で役員報酬の総額を決め、報酬の金額の内訳は取締役会または代表取締役に決定を一任します。実態としては、一定の規模以上の企業統治がなされている会社以外では、経営者が役員報酬を決めていることが多いです。税務調査で株主総会議事録や取締役会議事録を確認される場合があるので必ず作成してください。

法人税法では、役員報酬が利益処分の性格が強く、規制がなければ法人の利益調整に利用されることから、役員報酬について定期同額給与、事前確定届出給与、業績連動給与に該当しないものは損金の額に算入されないこととされています。これらに該当しても、不相当に高額な部分の金額は、損金の額に算入されません。

【定期同額給与】
各事業年度で支払われる毎月の報酬金額が同額である給与のことで、税務署への特別な届出は不要です。定期同額給与における役員報酬の改定は、事業年度の開始の日から3か月以内に実施してください。

【事前確定届出給与】
役員に対する賞与のことで、株主総会で決議をした日から4か月以内(または事業年度開始の日から4か月以内の早い日)に所轄の税務署に「事前確定届出給与に関する届出書」を提出し、届出書のとおりに支給日に記載金額を支払う必要があります。
新設法人の場合は設立日から2か月以内に提出する必要があります。株式または新株予約権による報酬も可能です。

【利益連動給与】
同族会社以外の法人が、利益に関する指標を基準にして業務執行役員に支払う給与のことです。以下の要件を満たすものが該当します。
(1)報酬の算定方法が、利益の状況を示す指標、株式の市場価格の状況を示す指標又は売上高の状況を示す指標を基礎とした客観的なもので、次の要件を満たすものであること。
イ 定額又は確定数を限度としているものであり、かつ、他の業務を執行する役員に対して支給する業績連動給与に係る算定方法と同様のものであること。
ロ その事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3か月を経過する日までに一定の報酬委員会等がその算定方法を決定していること。
ハ その内容が上記ロの適正手続終了の日以後遅滞なく、有価証券報告書に記載されていることその他一定の方法により開示されていること。

(2)次に掲げる給与の区分に応じそれぞれ次の要件を満たすものであること。
イ ロに掲げる給与以外の給与 次に掲げる給与の区分に応じてそれぞれ次に定める日までに交付され、又は交付される見込みであること。
(イ)金銭による給与 その金銭の額の算定の基礎とした利益の状況を示す指標、株式の市場価格の状況を示す指標又は売上高の状況を示す指標の数値が確定した日の翌日から1か月を経過する日。
(ロ)株式又は新株予約権による給与 その株式又は新株予約権の数の算定の基礎とした業績連動指標の数値が確定した日の翌日から2か月を経過する日。
ロ 特定新株予約権又は承継新株予約権による給与で、無償で取得され、又は消滅する新株予約権の数が役務の提供期間以外の事由により変動するもの その特定新株予約権又は承継新株予約権に係る特定新株予約権が業績連動給与の算定方法につき適正な手続の終了の日の翌日から1か月を経過する日までに交付されること。

(3)損金経理をしていること。

役員報酬の損金算入要件を知らなければ思わぬ落とし穴にはまってしまいますので、ご注意ください。

【参考】国税庁:役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)

弊社の税務相談サービスはこちら