法定調書とは所得税法や相続税法等で、税務署へ提出することが義務づけられている資料のことです。税務署が金銭の支払いがあった際に、その事実を届出させ、金銭の動きを把握する資料です。

法定調書は税務署で脱税防止のために活用されています。
例えば、報酬の支払い側が支払金額を税務署に届け出ます。このとき、報酬の受け取り側が同額の所得があったと申告すれば、両者の数値は一致し適正に申告されたものであることがわかります。
一方、報酬の受け取り側が申告をしない、あるいは過小申告をした場合に支払調書の内容と一致しないため、税務署からお尋ねという問い合わせの文書の送付や税務調査で確認することになります。

所得税法等で規定されている法定調書は59種類あります。主な法定調書として以下のものをご説明します。

1.給与所得の源泉徴収票
給与所得の源泉徴収票は、給与等を支払った全ての者について作成し、交付することとされています。
給与の支払者が税務署に提出する平成28年1月1日以後の支払に係る給与所得の源泉徴収票には、給与の支払を受ける方等のマイナンバー又は法人番号を記載する必要があります。受給者に交付する給与所得の源泉徴収票には、マイナンバー及び法人番号を記載しません。

「給与所得の源泉徴収票」を提出するのは、給与を支払った側である会社や事業主であり、税務署に提出しなければならないのは、以下のような場合です。

・年末調整をしたもの
(1)法人の役員(相談役、顧問含む)については、年内の給与等の支払金額が150万円を超えるもの。
(2)弁護士、司法書士、税理士等については、その年中の給与等の支払金額が250万円を超えるもの。
(3)上記(1)(2)以外の者で、年内の給与等の支払金額が500万円を超えるもの。
なお、上記(2)の弁護士等に対する支払については、報酬として支払う場合は、「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」を提出することとなります。

・年末調整をしなかったもの
(1)「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出した者で、年内に退職した者や、災害により源泉徴収の猶予を受けた者については、年内の給与等の支払金額が250万円を超えるもの。ただし、法人の役員については、50万円を超えるもの。
(2)「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出した者で、年内の主たる給与等の金額が2,000万円を超えるため、年末調整をしなかったもの。
(3)「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出しなかった者で、給与所得の源泉徴収税額表の月額表又は日額表の乙欄又は丙欄の適用者については、その年中の給与等の支払金額が50万円を超えるもの。

「給与所得の源泉徴収票」は、上記の提出範囲にかかわらず、その年の翌年の1月31日まで(年の中途で退職した者の場合は、退職の日以後1か月以内)に全ての受給者に交付しなければなりません。

2.報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」を提出するのは、報酬を支払った側である会社や事業主です。
「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」の提出範囲は、以下のような場合です。
(1)外交員、集金人、電力量計の検針人及びプロボクサー等の報酬の支払金額の合計額が50万円を超えるもの。
(2)馬主に支払う競馬の賞金の1回の支払賞金額が75万円を超えるもの。
(3)プロ野球の選手などに支払う報酬、契約金の支払金額の合計額が5万円を超えるもの。
(4)弁護士、税理士等に対する報酬、作家、画家に対する原稿料、講演料等の支払金額の合計額が5万円を超えるもの。
(5)社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬の年内の支払金額の合計額が50万円を超えるもの。
提出範囲の金額については、消費税及び地方消費税の額を含めて判断しますが、消費税及び地方消費税の額が明確に区分されている場合には、その額を含めないで判断しても差し支えありません。
なお、法人に支払われる報酬・料金等で源泉徴収の対象とならないものや支払金額が源泉徴収の限度額以下であるため源泉徴収をしていない報酬、料金等についても、支払調書の提出範囲に該当する場合には支払調書を提出する必要があります。また、平成28年1月1日以後に支払の確定する報酬等に係る支払調書から、マイナンバー又は法人番号を記載する必要があります。

法定調書の提出期限ですが、原則として翌年1月31日となっています。平成30年に支払われた場合、平成31年1月31日までに税務署に提出しなければなりません。

【参考】国税庁:法定調書関係

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