株式の相続税評価は、相続税申告の中でも特に誤りやすく、かつ税額に大きな影響を与える重要な論点です。税理士の立場から見ると、まず押さえておくべきは「上場株式」と「非上場株式」で評価方法が大きく異なる点です。
上場株式については、原則として相続開始日の終値を基準に評価しますが、それだけではありません。実務上は、相続開始日の属する月の毎日の終値平均、前月の終値平均、前々月の終値平均のうち、最も低い価額を採用することが認められています。株価は日々変動するため、こうした選択肢を適切に比較検討することで、評価額を合理的に抑えることが可能です。特に相場が下落傾向にある局面では、この選択が税額に大きく影響します。
一方、非上場株式の評価はより複雑です。国税庁の「財産評価基本通達」に基づき、会社の規模や株主の立場に応じて、「類似業種比準価額方式」「純資産価額方式」、またはその併用方式により評価を行います。例えば、同族会社のオーナー株主の場合、純資産価額方式の比重が高くなりやすく、会社が保有する不動産や含み益の状況が評価額に直結します。したがって、単に決算書を見るだけでなく、時価ベースでの資産内容の精査が不可欠です。
また、実務では「評価引下げ」の視点も重要です。例えば、役員退職金の支給予定や含み損のある資産の整理、配当政策の見直しなど、事前の対策によって評価額を適正にコントロールできるケースもあります。ただし、過度な節税は税務上問題視される可能性もあるため、合理性と実態に基づいた対応が求められます。
株式の評価は専門性が高く、少しの判断の違いが大きな税額差につながります。相続発生後の対応だけでなく、生前からの準備が極めて重要です。税理士としては、顧問先の企業価値や株主構成を踏まえ、早い段階から適切なアドバイスを行うことが、円滑な事業承継と適正な納税につながると考えます。
