試験研究費の総額に係る税額控除制度についてご説明します。

制度の概要
試験研究費の総額に係る税額控除制度は、その事業年度において損金の額に算入される試験研究費の額がある場合に、その試験研究費の額の一定割合の金額をその事業年度の法人税額から控除できるものです。青色申告法人が適用対象法人です。

試験研究費の額
対象となる試験研究費とは、製品の製造若しくは技術の改良、考案若しくは発明に係る試験研究のために要する一定の費用又は対価を得て提供する新たな役務の開発に係る試験研究として以下のもの全てが行われる場合です。
(1)大量の情報を収集する機能を有し、その全部又は主要な部分が自動化されている機器又は技術を用いて行われる情報の収集
(2)その収集により蓄積された情報について、一定の法則を発見するために、確率論及び統計学に係る情報解析専門家により専ら情報の解析を行う機能を有するソフトウェアを用いて行われる分析
(3)分析により発見された法則を利用した新サービスの設計
(4)発見された法則が予測と結果の一致度が高い等妥当であると認められるものであること及びその発見された法則を利用した新サービスがその目的に照らして適当であると認められるものであることの確認

税額控除限度額
税額控除額は、その事業年度の損金の額に算入される試験研究費の額に、以下の税額控除割合を乗じて計算した金額です。ただし、税額控除額がその事業年度の法人税額の25%相当額を超える場合は、原則としてその25%相当額が限度となります。

平成29年4月1日から平成31年3月31日までの間に開始する各事業年度においては、試験研究費の額が平均売上金額の10%を超える場合には、税額控除額の上限(法人税相当額の25%相当額)については、25%に試験研究費割合から10%を控除した割合を2倍した割合(10%が上限)を加算した割合(上限35%)により計算した金額を限度とすることができます。この上乗せ措置の適用を受ける事業年度においては、平均売上金額の10%を超える試験研究費に係る税額控除制度の適用を受けることはできません。

平成29年4月1日から平成31年3月31日までの間に開始する各事業年度においては、税額控除額は、試験研究費の額に増減試験研究費割合に応じた次の税額控除割合(14%が上限となります。)を乗じて計算します。
・増減試験研究費割合が5%を超える場合
9%+(増減試験研究費割合-5%)×0.3 (14%を超える場合は14%)
・増減試験研究費割合が5%以下の場合
9%-(5%-増減試験研究費割合)×0.1 (6%未満の場合は6%)

増減試験研究費割合とは、試験研究費増減差額の比較試験研究費の額に対する割合をいいます。
試験研究費増減差額とは、試験研究費の額から比較試験研究費の額を減算した金額をいいます。
比較試験研究費の額とは、適用年度開始の日前3年以内に開始した各事業年度において損金の額に算入される試験研究費の額を平均した額をいいます。

なお、試験研究費の額が増加した場合等の税額控除制度により、別枠で税額控除をすることができますが、その場合の税額控除額は以下のようになります。ただし、税額控除額がその事業年度の法人税相当額の10%相当額を超える場合は、10%相当額が限度となります。
平成29年4月1日から平成31年3月31日までの間に開始する各事業年度においてその損金の額に算入される試験研究費の額が、その事業年度の平均売上金額の10%相当額を超える場合

税額控除額=(試験研究費の額-平均売上金額×10%)×超過税額控除割合
超過税額控除割合=(試験研究費割合-10%)×0.2

平均売上金額とは、適用年度及び適用年度開始の日前3年以内に開始した各事業年度の売上金額の平均額をいいます。
税額控除限度額の上限を25%から35%に上乗せする措置の適用を受ける場合には、この制度の適用を受けることはできません。

適用要件
中小企業者等以外の法人が平成30年4月1日から平成33年3月31日までの間に開始する各事業年度において一定の要件を満たさない場合には適用できません。
この制度の適用を受けるためには、控除の対象となる試験研究費の額及び控除を受ける金額を確定申告書に記載するとともに、計算に関する明細書を添付して申告する必要があります。

なお、試験研究費の税額控除はよく税制改正の対象になるため、年度ごとに詳細な条件を確認する必要があります。

【参考】国税庁:試験研究費の総額に係る税額控除制度(総額型)

関連コラム:中小企業技術基盤強化税制について