退職給付債務は、割引率、退職率、昇給率などの計算基礎を用いて算定するため、金利や従業員の状況が変化すると金額も変動します。しかし、わずかな変化のたびに計算基礎を変更すると、実務負担が大きくなるだけでなく、退職給付債務が必要以上に変動することがあります。そこで日本基準では重要性基準という考え方が採用されています。

重要性基準とは、割引率等の計算基礎に重要な変動が生じていない場合には、従来の計算基礎を見直さないことができる取扱いです。

特に割引率については、毎期その妥当性を再検討し、期末の割引率で計算した退職給付債務が、前期末の割引率を使用した場合と比較して10%以上変動すると推定される場合には、重要な影響があるものとして割引率を変更し、退職給付債務を再計算する必要があります。

これと似た考え方として、回廊アプローチがあります。回廊アプローチは、数理計算上の差異について一定の許容範囲を設け、その範囲内の差異について直ちに費用処理しない方法です。

日本基準では、計算基礎そのものについて重要性による判断を認めたうえで、さらに回廊を設けると許容範囲が過度に広くなるとの考えから、回廊アプローチは採用していません。

したがって実務では、「10%未満なら必ず割引率を変更しなくてよい」と機械的に判断するのではなく、金利環境や退職給付制度の状況を踏まえ、計算基礎に重要な変化が生じていないかを毎期確認することが重要です。

【参考】ASBJ:企業会計基準適用指針第25号 退職給付に関する会計基準の適用指針

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