会社法上、株式会社は自由に配当を行えるわけではありません。仮に十分な現金預金があったとしても、法令上定められた分配可能額を超えて配当を行うことはできません。この分配可能額の計算は、株主への配当だけでなく、自己株式取得などにも関係する重要な概念であり、経理担当者にとって必須の知識です。
1.分配可能額とは
分配可能額とは、会社が株主へ配当等として分配できる限度額をいいます。
これは、債権者保護を目的として設けられている制度です。
つまり、会社財産を過度に流出させないためのルールといえます。
2.なぜ重要なのか
分配可能額を超えて配当すると、違法配当となります。
その場合、取締役、受領株主に返還責任等が発生する可能性があります。
3.分配可能額の基本構造
会社法上の分配可能額は、概ね以下の要素で構成されます。
その他資本剰余金+その他利益剰余金+当期利益等−自己株式−一定の控除額
資本金や資本準備金は原則配当原資になりません。
実務では、その他利益剰余金(繰越利益剰余金)が中心となります。
ここに、当期純利益、任意積立金取崩などを加味して計算します。
4.分配可能額計算で注意すべき点
(1)自己株式
自己株式は、純資産を減少させる要素であり、分配可能額を減額します。
(2)決算日後の変動
分配可能額は、配当決議日時点で計算する必要があります。
そのため、決算後の自己株取得、剰余金処分も影響します。
(3)連結ではなく単体
分配可能額は、個別財務諸表ベースで判定します。
5.実務上の重要ポイント
(1)剰余金配当との関係
会社法上の配当可能性と、現金余力は別問題です。
(2)金融機関・上場会社
金融機関や上場会社では、配当政策と密接に関連します。
(3)監査上の確認
会計監査では、配当決議時点の分配可能額計算を確認します。
分配可能額は、配当できる上限額、債権者保護目的、個別財務諸表ベースで判定という特徴があります。
配当は、現金があるかではなく、法的に配当可能かで決まります。
企業にとって配当は重要な資本政策ですが、その前提には適切な分配可能額計算があります。会社法・会計・資本政策を総合的に理解し、適法な配当運営を行うことが重要といえるでしょう。
