排出量取引の会計処理に関する当面の取扱いについてご説明します。
本取扱いは、京都議定書で定められた京都メカニズムにおけるクレジット(排出クレジット)を獲得して排出量削減に充てることを想定した取引や、第三者へ販売するために排出クレジットの獲得を図る取引が見受けられるため、現行の会計基準の枠内で当面必要と考えられる実務上の取扱いを定めたものです。京都メカニズム以外のクレジットも含めた取引も範囲に含まれます。
専ら第三者に販売する目的で排出クレジットを取得する場合の会計処理
(1)他者から購入する場合
専ら第三者に販売する目的で排出クレジットを他者から購入する場合、通常の商品等の購入と同様の会計処理を行います。引渡しを受けた段階で取引を認識し、排出クレジットを取得原価により棚卸資産として処理し、期末における正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、当該正味売却価額をもって貸借対照表価額とします。
(2)出資を通じて取得する場合
排出クレジットに係る出資は、個別財務諸表上、金融商品会計基準に従って会計処理します。排出クレジットが分配された場合は、現物の分配を受けた場合と同様であると考えられるため、以下のように会計処理します。
①当初から排出クレジットでの分配を期待して出資し、排出クレジットの分配が行われた場合には、保有していた出資の帳簿価額のうち実質的に引き換えられたものとみなされる額について、投資元本の帳簿価額から減額し、同額を分配された排出クレジットの取得原価として計上します。
②投資の成果として排出クレジットの分配が行われた場合には、分配された排出クレジットの時価をもって収益として計上します。
将来の自社使用を見込んで排出クレジットを取得する場合の会計処理
(1)他者から購入する場合
将来の自社使用を見込んで排出クレジットを他者から購入する場合、無形固定資産または投資その他の資産の購入として会計処理を行います。
排出クレジットは、減価償却は行わず、固定資産の減損に係る会計基準の対象となります。第三者への売却可能性に基づく財産的価値を有していることから独立したグルーピングとなります。
資産として計上された排出クレジットは、自社の排出量削減に充てられたときに、これを費用として計上します。
(2)出資を通じて取得する場合
専ら第三者に販売する目的で取得する場合と同様に、出資を個別財務諸表上、金融商品会計基準に従って会計処理し、出資先が子会社または関連会社に該当する場合には、連結財務諸表上は子会社及び持分法適用会社として会計処理します。
(3)無償で取得する場合
試行排出量取引スキームにおいて、政府から排出枠を無償で取得する場合は、以下のように会計処理します。
①事後清算により排出枠を取得する場合
各目標設定年度の排出量削減目標を超過達成すると、超過達成分に相当する排出枠を取得しますが、次年度以降に目標未達となった場合に、当該排出枠を不足分の充当に使用する可能性があること、また、当該スキームで定められた平成24年度までの目標設定年度以降における排出枠の取扱いが定まっていないため、将来、当該排出枠を売却できるとは限らないことから当該排出枠の取得時には会計上、取引を認識しません。
②事前交付により排出枠を取得する場合
排出枠は、過去の実績等に基づいて設定された排出総量目標に応じて事前交付され、その一部を売買することができますが、当該排出枠の事前交付時には事後清算により排出枠を取得する場合と同様に、会計上、取引を認識しません。
【参考】企業会計基準委員会 実務対応報告第15号
排出量取引の会計処理に関する当面の取扱い