金融商品に関する会計基準及び金融商品会計に関する実務指針に沿った貸倒引当金についてご説明します。
債権の分類
債務者の財政状態及び経営成績等に応じて債権を以下のように区分し、債権者区分ごとに貸倒見積高の算定します。
(1)一般債権…経営状態に重大な問題が生じていない債務者に対する債権
(2)貸倒懸念債権… 経営破綻の状態には至っていないが、債務の弁済に重大な問題が生じているか又は生じる可能性の高い債務者に対する債権
(3)破産更生債権等…経営破綻又は実質的に経営破綻に陥っている債務者に対する債権
貸倒引当金の算定方法
債権区分によって算定方法が異なります。
(1)一般債権…貸倒実績率法
債権全体または同種類の債権ごとに、過去の貸倒実績率等の合理的な基準により貸倒見積高を算定します。
具体的には、一般債権全体について、期末の債権が翌期に貸倒した実績を求め、貸倒実績率とします。過去3年の貸倒実績率の平均値を当期末の一般債権残高に乗じて貸倒引当金を算定します。
(2)貸倒懸念債権…財務内容評価法またはキャッシュ・フロー見積法
財務内容評価法は、債権額から担保の処分見込額及び保証による回収見込額を減額し、その残額について債務者の財政状態及び経営成績を考慮して貸倒引当金を算定する方法です。この方法は、実質的な債権の回収額を考慮して算定する方法です。
キャッシュフロー見積法は、債権の元本の回収及び利息の受取りに係るキャッシュ・フローを合理的に見積ることができる債権について、債権の元本及び利息について元本の回収及び利息の受取りが見込まれるときから当期末までの期間にわたり当初の約定利子率で割り引いた金額の総額と債権の帳簿価額との差額を貸倒引当金とする方法です。この方法は、貸付金が当初の契約から変更となり、返済スケジュールや利率に変更が生じた際に適した方法です。
(3)破産更生債権等…財務内容評価法
財務内容評価法により、債権額から担保の処分見込額及び保証による回収見込額を減額し、その残額を貸倒見積高とします。貸倒懸念債権の場合と異なるのは、債権額から担保の処分見込額及び保証による回収見込額を除くと、残額はすべて回収できないと想定している点です。
なお、会社法の計算書類個別注記表においては、重要な会計方針の引当金の計上基準の項目で、貸倒引当金の計上基準を開示する必要があります。
【参考】企業会計基準委員会 企業会計基準第10号
金融商品に関する会計基準