企業の決算では、貸借対照表に計上されている債務だけでなく、将来負担が生じる可能性のある偶発債務にも注意する必要があります。偶発債務とは、現時点では現実に発生していないものの、将来一定の条件が成立した場合に企業の負担となる可能性がある債務をいいます。
代表的なものが、子会社や取引先の銀行借入金に対する債務保証です。保証先が正常に返済している間は会社自身に支払義務は生じませんが、保証先が返済できなくなれば代わりに支払う可能性があります。このほか、訴訟を提起されており、敗訴した場合に損害賠償義務が生じるケースや、保証と同様の経済的効果を有する契約なども偶発債務となることがあります。
偶発債務と引当金の違いも重要です。将来の費用または損失について、当期以前の事象に起因し、発生可能性が高く、金額を合理的に見積もることができる場合には、単に偶発債務として注記するのではなく、引当金を計上することが必要です。
一方、引当金の計上要件を満たさない場合でも、将来の負担可能性があり、その金額に重要性がある場合には、偶発債務として財務諸表に内容および金額を注記します。重要性が乏しい場合には、注記を省略することができます。
実務では、決算時に保証契約、訴訟・紛争、損害賠償請求、経営指導念書などを一覧化し、顧問弁護士等への確認も行いながら、引当金計上の要否と偶発債務注記の要否を検討することが重要です。偶発債務は貸借対照表だけでは把握できないため、適切な注記は財務諸表利用者が企業の潜在的なリスクを理解するうえでも重要な情報となります。
