退職給付会計では、原則として従業員ごとに将来の退職給付を見積もり、割引率、退職率、昇給率などを用いて退職給付債務を計算します。しかし、従業員数が比較的少ない企業では、精緻な数理計算を行っても十分な信頼性が得られない場合があります。このため、日本基準では小規模企業等について簡便法の適用を認めています。

簡便法を適用できる小規模企業等は、原則として退職給付債務の計算対象となる従業員数が300人未満の企業です。複数の退職給付制度がある場合には、制度ごとに対象従業員数を判定します。

代表的な計算方法が、期末時点の自己都合要支給額を利用する方法です。退職一時金制度の場合、期末に全従業員が自己都合退職したと仮定した場合の要支給額を、そのまま退職給付債務とする方法が認められています。このほか、自己都合要支給額に平均残存勤務期間に対応した昇給率・割引率の係数を乗じる方法や、原則法による計算額との比較指数を利用する方法もあります。

企業年金制度では、年金財政計算上の数理債務を利用して退職給付債務を算定する方法などが認められています。積立型制度の場合には、算定した退職給付債務から年金資産を控除して退職給付に係る負債または資産を計上します。

簡便法は計算負担を軽減できますが、選択した計算方法は原則として継続適用する必要があります。また、従業員数が増加した場合などには、原則法への移行が必要となることもあります。

したがって、簡便法を採用する際には、単に計算が容易だからという理由ではなく、自社の従業員規模や退職給付制度の実態を踏まえ、適用の妥当性を毎期確認することが重要です。

【参考】ASBJ:企業会計基準適用指針第25号 退職給付に関する会計基準の適用指針

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