退職給付会計では、将来の退職金や企業年金を、割引率、退職率、昇給率などの見積りに基づいて計算します。しかし、将来を完全に予測することはできないため、見積りと実績の間には差が生じます。この差額を数理計算上の差異といいます。
代表的な発生原因は、退職給付債務の計算に使用した見積数値と実績との差異、計算基礎の変更、年金資産の期待運用収益と実際の運用成果との差異です。
例えば、金利低下により割引率を2%から1%へ引き下げると、将来の退職給付を現在価値へ割り引く効果が小さくなるため、一般的には退職給付債務が増加し、数理計算上の差異が発生します。また、年金資産について100万円の運用収益を見込んでいたものの、実際には60万円しか得られなかった場合にも、40万円の差異が生じます。
日本基準では、数理計算上の差異を必ず発生年度に全額費用処理するわけではありません。発生年度に処理する方法のほか、平均残存勤務期間以内の一定年数にわたって定額法等により費用処理することが認められています。採用した処理方法や年数は、原則として継続して適用します。
連結財務諸表では、当期に費用処理されなかった数理計算上の差異を、税効果を調整したうえでその他の包括利益に計上し、純資産の退職給付に係る調整累計額に反映します。一方、個別財務諸表では、未認識数理計算上の差異を直ちに純資産へ反映しない取扱いが継続されています。
数理計算上の差異は、金利や人員構成、年金資産の運用実績によって大きく変動することがあります。決算時には発生額だけでなく、その原因や費用処理期間まで確認することが重要です。
