退職給付債務は、将来支払う退職金や企業年金を一定の前提に基づいて見積もり、現在価値に割り引いて計算します。この計算に使用する割引率、退職率、死亡率、予想昇給率などを「計算基礎」といいます。これらの基礎率は、退職給付債務の金額を左右する重要な会計上の見積りです。

まず「割引率」は、将来の退職給付を現在価値へ割り引くための利率です。期末時点の国債、政府機関債、優良社債など安全性の高い債券の利回りを基礎とし、退職給付の支払見込期間を反映して設定します。一般に、割引率が低下すると退職給付債務は増加し、上昇すると減少します。

「退職率」は、従業員が年齢や勤続年数ごとに退職する確率です。自社の過去の退職実績などを基礎として合理的に算定します。自己都合退職と会社都合退職で給付水準が異なる制度では、それぞれの発生可能性も考慮します。

「予想昇給率」は、給与を基礎として退職給付額が決まる制度などで使用します。給与規程や現在の給与分布、過去の昇給実績等を基礎として将来の給与水準を見積もります。また、年金制度では、退職後の給付期間を見積もるため死亡率も使用します。

このほか、年金資産の期待運用収益を計算するためには「長期期待運用収益率」を設定します。これは退職給付債務そのものを計算する基礎率ではなく、年金資産から期待される運用収益を算定するためのものです。

実際の状況がこれらの前提と異なった場合や基礎率を変更した場合には、数理計算上の差異が発生します。退職給付会計では、単に外部計算結果を利用するだけでなく、各基礎率が自社の実態や期末時点の市場環境を適切に反映しているかを確認することが重要です。

【参考】ASBJ:企業会計基準適用指針第25号 退職給付に関する会計基準の適用指針

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