医療法人会計基準の概要についてご説明します。

まず、医療法人会計基準の適用対象は以下の法人となります。
・医療法人
-最終会計年度の貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が50億円以上又は損益計算書の事業収益の部に計上した額の合計額が70億円以上
・社会医療法人
-最終会計年度の貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が20億円以上又は損益計算書の事業収益の部に計上した額の合計額が10億円以上
-社会医療法人債を発行していること
なお、最終会計年度は直前の会計年度を指します。

医療法人会計基準に定められている内容以外の会計処理については、一般に公正妥当と認められた会計基準に準拠する必要があります。現金主義会計を行っている場合には、発生主義会計への変更が必要となります。

負債総額が200億円未満であれば、以下のような簡便法による会計処理が可能とされています。
・期末自己都合要支給額により退職給付債務とする退職給付引当金の計上(新たに退職給付引当金を計上する場合には、適用時差異として分割償却することが可能。その場合損益計算書では特別損失に計上)
・リース取引開始日が、前々会計年度末日の負債総額が200億円未満である会計年度である、所有権移転外ファイナンス・リースは賃貸借処理を行うことができる。リース取引開始日が、医療法人会計基準の適用前の会計年度である所有権移転外ファイナンス・リースは賃貸借処理を行うことができる。
・前々会計年度末日の負債総額が200億円未満の場合に法人税法における貸倒引当金の繰入限度額を計上する。

その他の会計基準の採用についてですが、資産除去債務に関する会計基準等、必ずしも企業会計と同様に適用することが求められているわけではありません。医療法人会計基準に記載のない会計基準を適用しないことが、財務諸表利用者の誤解を招く恐れがある場合には、適用の必要性を監査人と十分に協議する必要があります。

医療法人会計基準で要求される注記事項としては、以下のものが挙げられています。
・重要な会計方針
一 資産の評価基準及び評価方法
二 固定資産の減価償却の方法
三 引当金の計上基準
四 消費税及び地方消費税の会計処理の方法
五 その他貸借対照表等作成のための基本となる重要な事項

・会計方針の変更に関する記載

・貸借対照表等に関する注記
一 継続事業の前提に関する事項
二 資産及び負債のうち、収益業務に関する事項
三 収益業務からの繰入金の状況に関する事項
四 担保に供されている資産に関する事項
五 法第五十一条第一項に規定する関係事業者に関する事項
六 重要な偶発債務に関する事項
七 重要な後発事象に関する事項
八 その他医療法人の財政状態又は損益の状況を明らかにするために必要な事項

注記事項について、重要性の乏しいものは省略することができます。

【参考】厚生労働省:医療法人会計基準

弊社の財務会計コンサルティングサービスはこちら