金融商品に関する会計基準及び金融商品会計に関する実務指針におけるデリバティブ及びヘッジ会計についてご説明します。

デリバティブの会計処理
為替予約、通貨スワップ、金利スワップ等のデリバティブ取引により生じる正味の債権及び債務は、時価で貸借対照表に資産または負債として計上し、評価差額は、特殊なデリバティブを除き、原則当期の損益として処理します。

ヘッジ会計の概要
ヘッジ会計とは、ヘッジ取引のうち一定の要件を充たすものについて、ヘッジ対象(相場変動が起こる資産負債、取引等)に係る損益とヘッジ手段(キャッシュフローの変動を回避するデリバティブ等)に係る損益を同一の会計期間に認識して、ヘッジの効果を会計に反映させるための特殊な会計処理です。

ヘッジ会計をヘッジ取引に適用するためには、ヘッジ対象が相場変動等により損失の可能性にさらされている場合で、ヘッジ対象とヘッジ手段に経済的相関関係がありそれぞれの損益が互いに相殺されるか、または、ヘッジ手段によりヘッジ対象のキャッシュ・フローが固定される関係が生じている必要があります。具体的には、輸出入取引の為替変動を回避するための為替予約、変動金利による借入金の支払利息を固定するための金利スワップ等が該当します。

ヘッジ会計の要件
ヘッジ取引にヘッジ会計が適用されるのは、(1)及び(2)の要件が充たされた場合です。
(1)①または②により、ヘッジ取引が企業のリスク管理方針に従ったものであることが客観的に認められる場合
①ヘッジ取引が企業のリスク管理方針に従ったものであることが、文書により確認できること。
②企業のリスク管理方針に関して明確な内部規定及び内部統制組織が存在し、当該取引がこれに従って処理されることが期待されること。
(2)ヘッジ取引時以降において、ヘッジ対象とヘッジ手段の損益が高い程度で相殺される状態またはヘッジ対象のキャッシュ・フローが固定されその変動が回避される状態が引き続き認められることによって、ヘッジ手段の効果が定期的に確認されていること。これは、決算日には必ずヘッジ有効性の評価を行わなければならず、ヘッジ手段がヘッジ対象の変動幅の80%~125%の間で、高い相関関係をもっていることを確認するものです。

ヘッジ会計の会計処理
ヘッジ会計は、原則、時価評価されているヘッジ手段に係る評価差額をヘッジ対象に係る損益が認識されるまで純資産の部において税効果会計を考慮し繰延ヘッジ損益として繰り延べます。
ただし、ヘッジ対象である資産または負債に係る相場変動等を損益に反映させることにより、その損益とヘッジ手段に係る損益とを同一の会計期間に認識することもできます。

ヘッジ会計の要件が充たされなくなったときの会計処理
ヘッジ会計の要件が充たされなくなった場合、ヘッジ会計の要件が充たされていた間の繰延ヘッジ損益は、ヘッジ対象に係る損益が認識されるまで引き続き繰り延べます。
ただし、繰延ヘッジ損益が、ヘッジ対象に係る含み益が減少することにより、ヘッジ会計の終了時点で重要な損失が生じるおそれが生じた場合、損失部分を見積り、当期の損失として処理します。

ヘッジ会計の終了
ヘッジ会計は、ヘッジ対象が消滅したときに終了し、繰延ヘッジ損益を当期の損益として処理します。

【参考】日本公認会計士協会:会計制度委員会報告第14号
金融商品会計に関する実務指針

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