金融商品に関する会計基準に規定されている金融商品の発生及び消滅の認識についてご説明します。

金融資産及び金融負債の発生の認識
金融資産または金融負債の契約上の権利、義務を生じさせる契約を締結したときは、原則としてその発生を認識します。

金融資産及び金融負債の消滅の認識
金融資産の認識の中止について、財務構成要素アプローチとリスク・経済価値アプローチという2つの考え方が存在します。
財務構成要素アプローチ:金融資産を構成する財務構成要素の一部に対する支配が第三者に移転した場合に移転した当該財務構成要素の消滅を認識し、留保される財務構成要素の存続を認識する考え方。
リスク・経済価値アプローチ:金融資産を一体としてそのリスクと経済価値のほとんどすべてが第三者に移転した場合に当該金融資産の消滅を認識する考え方。
日本基準では、財務構成要素アプローチを採用し、IFRSではリスク・経済価値アプローチを採用しています。

金融資産の消滅の認識要件
金融資産の契約上の権利を行使、もしくは喪失したとき、または、権利に対する支配が他に移転したときに金融資産の消滅を認識します。
金融資産の契約上の権利に対する支配が他に移転するのは、以下の要件がすべて充たされた場合です。
(1)譲渡された金融資産に対する譲受人の契約上の権利が譲渡人及びその債権者から法的に保全されていること
(2)譲受人が譲渡された金融資産の契約上の権利を直接または間接に通常の方法で享受できること
(3)譲渡人が譲渡した金融資産を当該金融資産の満期日前に買戻す権利及び義務を実質的に有していないこと

金融負債の消滅の認識要件
金融負債の契約上の義務を履行、義務が消滅、または第一次債務者の地位から免責されたときに、金融負債の消滅を認識します。

金融資産及び金融負債の消滅の認識に係る会計処理
金融資産または金融負債がその消滅の認識要件を充たした時に、消滅を認識し、帳簿価額と対価の受払額との差額を当期の損益として処理します。
金融資産または金融負債の一部が消滅の認識要件を充たした時には、一部の消滅を認識し、消滅部分の帳簿価額と対価の受払額との差額を当期の損益として処理します。消滅部分の帳簿価額は、金融資産または金融負債全体の時価に対する消滅部分と残存部分の時価の比率により、金融資産または金融負債全体の帳簿価額を按分して計算します。
金融資産または金融負債の消滅により、新たな金融資産または金融負債が発生した時は、時価により金融資産または金融負債を計上します。

経過措置
金融商品に関する会計基準の金融資産及び金融負債の消滅の認識要件を充たしませんが、以下の2つはリリスク・経済価値アプローチで、取り扱われます。
①ローン・パーティシペーション(貸出参加)は、金融機関からの貸出債権に係る権利義務関係を移転させずに、貸出債権に係る経済的利益とリスクを貸出債権の債権者から参加者に移転させる契約です。
ローン・パーティシペーションは、債権譲渡に代わる債権流動化の手段として広く利用され、銀行にとっては、貸付債権を貸借対照表からオフバランスできるメリットがあります。
ローン・パーティシペーションは、契約上の形式は債権譲渡とは異なりますが、商慣行上、債権流動化の手法として広く利用されていることから、債権に係るリスクと経済的利益のほとんどすべてが金融機関から参加者に移転している場合等一定の要件を充たすものに限り、債権の消滅を認識することを認めることとされています。

②デット・アサンプションは、法的には社債が存在している状態のまま、自社が発行した社債の元利金支払義務を、金融機関等に譲渡してしまう取引です。
社債の買入償還が実務上煩雑であることから、社債の買入償還と同等の財務上の効果を得るための手法として広く利用されています。
取消不能の信託契約等により、社債の元利金の支払に充てることのみを目的として、元利金の金額が保全される資産を預け入れた場合等、社債の発行者に対し遡求請求が行われる可能性が極めて低い場合に限り、社債の消滅を認識します。

【参考】日本公認会計士協会:会計制度委員会報告第14号
金融商品会計に関する実務指針

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