IPOを目指して監査法人による監査を開始する場合、初年度の重要な作業の一つが期首残高固めです。初年度監査では当期の取引だけでなく、期首時点の貸借対照表に重要な誤りがなく、その残高が当期の財務諸表へ適切に引き継がれているかを確認する必要があります。
監査基準報告書510では、監査人は、期首残高に当期の財務諸表へ重要な影響を与える虚偽表示が含まれていないか、また、適切な会計方針が継続して適用されているかについて十分かつ適切な監査証拠を入手することが求められています。
上場準備会社では、それまで税務申告を中心とした決算を行っていたため、会計基準との差異が初年度に発見されることも少なくありません。例えば、売掛金の回収可能性、棚卸資産の数量・評価、固定資産の実在性や減損、引当金、税効果会計、関連当事者取引などについて、期首残高まで遡って整理する必要があります。
また、棚卸資産のように期首時点へ後から遡って実在性を確認することが難しい項目もあります。そのため、監査契約の締結が遅れるほど、十分な監査証拠を確保することが難しくなる可能性があります。期首残高について十分かつ適切な監査証拠を入手できなければ、監査意見にも影響する場合があります。
上場準備初年度では、監査法人を早期に選定し、期首残高や過年度の会計処理について早い段階から課題を洗い出すことが重要です。期首残高を適切に固めることは、その後の上場準備監査を円滑に進めるための土台となります。
