収益認識に関する会計基準の概要についてご説明します。

従来の取り扱い
「売上高は、実現主義の原則に従い、商品等の販売又は役務の給付によって実現したものに限る。」という、企業会計原則における損益計算書原則に実現主義で収益認識する記載があるのみでした。

適用時期
平成33年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用が求められます。早期適用については、平成30年12月31日に終了する連結会計年度及び事業年度から平成31年3月30日に終了する連結会計年度及び事業年度から適用できます。早期適用した場合でも期首から遡って本会計基準の適用が求められます。

基本となる原則
本会計基準の基本となる原則は、約束した財又はサービスの顧客への移転をそれと交換に企業が権利を得ると見込む対価の額で描写するように収益を認識することです。
基本となる原則に従って収益を認識するために、次の5つのステップを適用します。
ステップ1:顧客との契約を識別する
ステップ2:契約における履行義務を識別する
ステップ3:取引価格を算定する
ステップ4:契約における履行義務に取引価格を配分する
ステップ5:履行義務の充足により収益を認識する

ステップ1:契約の識別
以下の(1)から(5)の要件のすべてを満たす顧客との契約を識別します。
(1)当事者が、書面、口頭、取引慣行等により契約を承認し、それぞれの義務の履行を約束していること
(2)移転される財又はサービスに関する各当事者の権利を識別できること
(3)移転される財又はサービスの支払条件を識別できること
(4)契約に経済的実質があること(契約の結果、企業の将来キャッシュ・フローのリスク、時期又は金額が変動すると見込まれること)
(5)顧客に移転する財又はサービスと交換に企業が権利を得ることとなる対価を回収する可能性が高いこと(対価を回収する可能性の評価にあたっては、対価の支払期限到来時における顧客が支払う意思と能力を考慮する)

ステップ2:履行義務の識別
契約における取引開始日に、顧客との契約において約束した財又はサービスを評価し、以下のいずれかを履行義務として識別します。
(1)別個の財又はサービス
(2)一連の別個の財又はサービス

顧客に約束した財又はサービスは、以下の要件をいずれも満たす場合に、別個のものとします。
・財又はサービスから単独で顧客が便益を享受することができること、あるいは、財又はサービスと顧客が容易に利用できる他の資源を組み合わせて顧客が便益を享受することができること(財又はサービスが別個のものとなる可能性があること)
・当該財又はサービスを顧客に移転する約束が、契約に含まれる他の約束と区分して識別できること(財又はサービスを顧客に移転する約束が契約の観点において別個のものとなること)

ステップ3:取引価格の算定
取引価格とは、財又はサービスの顧客への移転と交換に企業が権利を得ると見込む対価の額です。取引価格の算定にあたっては、契約条件や取引慣行等を考慮します。
取引価格を算定する際には、以下の①から④のの影響を考慮します。
①変動対価
②契約における重要な金融要素
③現金以外の対価
④顧客に支払われる対価

ステップ4:履行義務への取引価格の配分
それぞれの履行義務に対する取引価格の配分は、財又はサービスの顧客への移転と交換に企業が権利を得ると見込む対価の額を描写するように行います。財又はサービスの独立販売価格の比率に基づき、契約において識別したそれぞれの履行義務に取引価格を配分します。

ステップ5:履行義務の充足による収益の認識
企業は約束した財又はサービス(資産)を顧客に移転することにより、履行義務を充足した時に又は充足するにつれて、収益を認識します。資産が移転するのは、顧客が資産に対する支配を獲得した時又は獲得するにつれてです。
契約における取引開始日に、識別された履行義務のそれぞれが、一定の期間にわたり充足されるものか又は一時点で充足されるものかを判定します。

注記事項
顧客との契約から生じる収益については、企業の主要な事業における主な履行義務の内容及び企業が当該履行義務を充足する通常の時点(収益を認識する通常の時点)を注記します。当該注記は、重要な会計方針の注記には含めず、個別の注記として開示します。

収益認識に関する会計基準は、IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」をベースに定められており、非常にわかりにくい内容です。気軽に当事務所にご相談ください。

【参考】企業会計基準委員会 企業会計基準適用指針第30号
収益認識に関する会計基準の適用指針

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