法人成りとは、個人事業主が株式会社や合同会社等の法人を設立し、法人で事業を行うことを指します。
一般的に、事業所得金額が、年間500万円~600万円以上ある個人事業主の方は、法人成りを検討するタイミングであると言われています。
これは、所得税と法人税の税率の差があるため、一定の所得以上であれば法人化することで、トータルで支払う税額が個人事業主より有利になるためです。
個人の所得税が、5%から45%まで7段階になっており、所得の金額が多いと法人税率よりも高い税率が課される場合があります。また、事業所得に係る個人事業税の税率は業種によりますが、290万円の事業主控除後の金額に5%追加で税金がかかります。一方、資本金1億円以下の中小企業の法人税率は所得が800万円以下であれば19%、800万円を超える部分の法人税率は23.2%となっています。

法人成りで、一概に納める税金が少なくなるという以外の側面があるため、メリットとデメリットをご説明します。

【法人成りのメリット】
・節税になる
役員報酬は給与所得になるため、概算経費である給与所得控除が所得の計算上差し引かれるため、所得税の節税効果があります。また、法人においては、役員報酬は損金になります。個人事業主では支払えない退職金を法人では適正金額であれば損金算入できます。
その他、純損失の繰越控除は3年間だけですが、法人の繰越欠損金は10年間使用可能です。
消費税の観点では、資本金1,000万円未満かつ設立1年目の半年間の課税売上高が1,000万円を超えなければ、納付が最大2年間免除されます。

・社会的な信用が高くなる
法人は登記簿謄本により、会社の所在地や資本金、役員などの重要事項を確認できるためです。

・有限責任となる
個人事業主は無限責任ですが、株式会社や合同会社では出資者は有限責任です。株主兼経営者では、出資した範囲内でのみ返済の責任を負います。中小企業の借入や賃貸借契約では、経営者の保証を付ける場合が多いです。

【法人成りのデメリット】
・設立費用がかかる
株式会社を設立する場合は、最低約25万円(電子定款の場合は約21万円)、合同会社を設立する場合は、最低約10万円(電子定款の場合は約6万円)かかります。個人事業主の国民健康保険、国民年金よりも社会保険料のほうが高額です。

・社会保険への加入
法人は健康保険と厚生年金保険への加入が義務づけられており、会社は従業員の社会保険料の半分を負担しなければなりません。

・赤字でも納税が生じる
法人住民税の均等割で最低7万円を納税しなければなりません。

なお、法人成りをする際には、法人の設立、個人事業主から法人への資産の移行、税務署への個人事業の廃業手続が必要です。

法人成りに関する一般論をご説明させていただきました。

【参考】国税庁:個人で事業を始めたとき/法人を設立したとき

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