成年後見制度と税理士

高齢化が進むなか、認知症などによって判断能力が低下した方の財産や生活をどのように守るかは、重要な課題となっています。そのための制度が成年後見制度です。

成年後見制度には、判断能力が不十分になった後に家庭裁判所が成年後見人等を選任する「法定後見制度」と、判断能力が十分なうちに将来の支援者を契約で決めておく「任意後見制度」があります。法定後見制度は、本人の判断能力に応じて「後見」「保佐」「補助」に分かれます。

成年後見人の重要な仕事の一つが財産管理です。預貯金や有価証券、不動産などを把握し、本人の生活費や医療・介護費を適切に支出するとともに、必要に応じて各種契約などを行います。

こうした場面では、税理士の専門性を活かすことができます。税理士は日常的に預貯金、不動産、有価証券、事業用資産などを確認し、所得税・相続税をはじめとする税務に携わっています。そのため、家庭裁判所から成年後見人等に選任された場合には、財産状況を整理しながら適切な管理を行うことが期待されます。

また、本人に不動産所得や事業所得がある場合には確定申告が必要となることがあります。さらに、成年後見期間中に相続が発生すれば、遺産分割や相続税申告など税務上の検討事項も生じます。資産構成が複雑な方や事業を営んでいる方では、税務・会計に詳しい専門家の関与が有効なケースがあります。

もっとも、成年後見人の役割は税務だけではありません。本人の意思を尊重しながら、医療・介護・福祉関係者や弁護士、司法書士などと連携することも重要です。将来の財産管理に不安がある場合には、判断能力が十分な段階から任意後見や遺言、相続対策を含めて検討しておくことが大切です。

【参考】日本税理士会連合会:成年後見支援

関連コラム:任意後見制度と相続対策

令和7年度の所得税の基礎控除の見直し

令和7年度税制改正により、所得税の基礎控除、給与所得控除が見直しされ、特定親族特別控除が新設されました。
令和7年分以後の所得税について適⽤され、令和7年12月に行う年末調整に影響が生じます。

1.基礎控除の見直し
以下のように、合計所得金額に応じて、基礎控除額が改正されました。
合計所得⾦額132万円以下:95万円(改正前:48万円)
合計所得⾦額132万円超336万円以下:88万円(令和9年分以後は58万円)(改正前:48万円)
合計所得⾦額336万円超489万円以下:68万円(令和9年分以後は58万円)(改正前:48万円)
合計所得⾦額489万円超655万円以下:63万円(令和9年分以後は58万円)(改正前:48万円)
合計所得⾦額655万円超2,350万円以下:58万円(改正前:48万円)

2.給与所得控除の見直し
給与所得控除は、最低保障額が55万円から65万円に引き上げられました。

3.特定親族特別控除の新設
居住者が特定親族(居住者と生計を一にする年齢19歳から23歳未満の親族)を有する場合には、その居住者の総所得金額から、その特定親族1⼈につき、その特定親族の合計所得金額に応じて63万円を控除する特定親族特別控除が新設されました。

【参考】国税庁:令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について

医療法人の「持分あり」と「持分なし」の違い

医療法人には、大きく分けて「持分あり医療法人」と「持分なし医療法人」があります。ここでいう「持分」とは、株式会社の株式のような議決権ではなく、出資者が医療法人の財産に対して有する財産的な権利を意味します。

持分あり医療法人では、定款の定めに基づき、社員が退社した際に出資持分に応じた払戻しを請求できる場合があります。また、持分は財産的価値を有するため、出資者が死亡すると相続税の課税対象となります。医療法人の純資産が長年の利益蓄積によって大きくなっている場合、当初の出資額が少額であっても、持分の評価額が高額になることがあります。

さらに、退社する出資者から多額の払戻請求を受けると、医療法人の資金繰りや病院・診療所の経営に影響する可能性があります。

これに対し、持分なし医療法人では、出資者が法人財産に対する持分を有しません。そのため、社員が退社しても持分に応じた財産の払戻しはなく、持分そのものを相続するという問題も生じません。なお、基金拠出型医療法人も持分なし医療法人の一類型です。

2007年4月1日の医療法改正以降、新たに設立する社団医療法人は原則として持分なし医療法人に限られ、従来から存在する持分あり医療法人は「経過措置医療法人」として存続しています。

持分あり医療法人では、事業承継や相続を考える際、持分評価額、相続税、将来の払戻請求などを早い段階から確認することが重要です。持分なし医療法人への移行を検討する場合も、持分放棄に伴う課税関係を含め、税務・法務の両面から慎重に検討する必要があります。

【参考】厚生労働省:「持分なし医療法人」への移行に関する手引書

関連コラム:公認会計士監査の対象となる医療法人

ふるさと納税の2025年10月からの変更点

2025年10月からふるさと納税の制度改正が施行され、ふるさと納税の仲介サイト(さとふる、ふるさとチョイス、楽天ふるさと納税等の納税ポータルサイト)は、ふるさと納税の寄付に対してポイントの付与を行うことができなくなります。
仲介サイトへの手数料への自治体の財政負担が大きいことやポイント付与に係わる競争が過熱し、ふるさと納税本来の趣旨から逸れてきていることが理由とされています。
ふるさと納税をクレジットカードで支払った場合には、クレジットカードのポイントは従来通り付与されます。

返礼品に加えてワンストップ特例事務や寄附金受領証の発行などの付随費用も含めて寄附金額の5割以下とするルールが適用されることで、経費が占める割合が増えて、返礼品の占める割合が減る可能性があります。

加工品のうち熟成肉と精米について、原材料が当該地方団体と同一の都道府県内産であるものに限り、返礼品として認めるとされ、他県産の肉や米を加工した製品を返礼品に設定する自治体の返礼品が変更されることとなります。

参考:総務省 ふるさと納税の次期指定に向けた見直し

参考:総務省 ふるさと納税に係る指定制度について

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関連コラム:ふるさと納税の2026年10月からの変更点

支払調書の概要について

企業や個人事業主が外部へ報酬や料金を支払った場合、その内容を税務署へ報告するために作成する書類が支払調書です。支払調書は単なる事務書類ではなく、税務署が所得の把握や申告漏れ確認を行うための重要資料となっており、提出漏れや記載誤りは税務リスクにつながる可能性があります。

1.支払調書とは何か
支払調書とは、一定の支払内容を税務署へ報告する法定調書です。
代表的なものとして、
•報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
•不動産の使用料等の支払調書
•不動産等の譲受けの対価の支払調書
などがあります。

2,なぜ提出が必要なのか
税務署は支払調書を利用して、誰がいくら収入を得たかを把握しています。
例えば、フリーランスへの報酬について支払調書が提出されることで、
報酬の受取側の申告漏れの確認が可能となります。

4.提出対象となる主な支払
特に実務で頻出なのは、士業・フリーランス等への報酬です。
例えば、
•税理士報酬
•弁護士報酬
•デザイナー報酬
•講演料
などが該当します。

4.提出期限
支払調書は原則として、翌年1月31日までに税務署へ提出します。
同時に、法定調書合計表の提出も必要です。

5.実務上の重要ポイント
(1)源泉徴収との関係
支払調書の対象となる支払は、源泉徴収が必要なケースが多いため、源泉所得税の徴収漏れ、源泉所得税の納付漏れにも注意が必要です。
(2)マイナンバー管理
支払調書には、マイナンバー記載が必要な場合があり、適切な管理体制が求められます。
(3)提出不要=作成不要ではない
税務署提出基準未満でも、受取人への交付や社内管理のため作成するケースがあります。

支払調書は、税務署が所得を把握する入口です、
支払調書は、単なる形式的な書類ではなく、税務調査や申告内容確認にも直結する重要書類です。日頃から支払内容を整理し、源泉徴収と合わせて適切に管理することが、税務リスクの回避につながるといえるでしょう。

【参考】国税庁:法定調書(源泉徴収票、支払調書)

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