消費税の課税事業者に関して

消費税の課税事業者についてご説明します。

免税事業者の条件
消費税法では、課税期間に係る基準期間における課税売上高が1,000万円以下の事業者は、納税の義務が免除されます。

免税事業者に該当しない事業者は課税事業者となります。

基準期間における課税売上高とは、
・個人事業者の場合は前々年の課税売上高
・法人の場合は前々事業年度の課税売上高
(基準期間が1年でない法人の場合は、1年に相当する金額に換算し判定)

※課税売上高は、輸出などの免税取引を含め、返品、値引き、割戻しをした対価の返還等の金額を差し引いた額(課税事業者は税抜、免税事業者は税込)で算定します。

新設法人については、設立1期目及び2期目の基準期間がないため、原則、納税義務が免除されます。しかし、基準期間のない事業年度であってもその事業年度の開始の日における資本金の額又は出資の金額が、1,000万円以上である場合や特定新規設立法人(親会社の課税売上高が5億円を超えている等)に該当する場合は、納税義務は免除されません。

特定期間
課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても特定期間における課税売上高が1,000万円を超えた場合、その課税期間から課税事業者となります。なお、特定期間における1,000万円の判定は、課税売上高に代えて、給与等支払額の合計額により判定することもできます。

【参考】国税庁:納税義務の免除

関連コラム:消費税の軽減税率制度

セグメント情報の概念、集約方法について

決算短信や有価証券報告書に記載されるセグメント情報の概念、セグメントの集約方法についてご説明します。

セグメント情報等の開示に関する会計基準・適用指針では、以下のセグメント情報等の開示に関する取扱いを定めています。
(1)セグメント情報
(2)セグメント情報の関連情報
(3)固定資産の減損損失に関する報告セグメント別情報
(4)のれんに関する報告セグメント別情報

マネジメント・アプローチ
セグメント情報は、マネジメント・アプローチと呼ばれる経営者が経営上の意思決定及び業績評価のために企業を事業の構成単位に分別した方法を基礎としてセグメント情報の開示を行う方法を採用しています。
つまりは、経営者が意思決定を行うのと同様の視点で、多角化した事業の売上高や営業利益、地域別の売上高や営業利益を投資家へ開示することが会計基準の目的です。経営者の識別している事業セグメントが報告セグメントへ集約されて開示されることとなります。

事業セグメント
事業セグメントは、次の要件のすべてに該当するものです。
(1)収益を稼得し、費用が発生する事業活動に関わるもの
(2)企業の最高経営意思決定機関が、当該構成単位に配分すべき資源に関する意思決定を行い、その業績を評価するために、経営成績を定期的に検討するもの
(3)分離された財務情報を入手できるもの
ただし、新たな事業を立ち上げたときのように、現時点では収益を稼得していない事業活動を事業セグメントとして識別する場合もあります。
企業の本社やコストセンターである特定の部門のような企業を構成する一部であっても収益を稼得していない、又は付随的な収益を稼得するに過ぎない構成単位は、事業セグメント又は事業セグメントの一部となりません。

報告セグメント
事業セグメントは集約基準に沿って集約した後に、量的基準に従い、報告セグメントを決定する必要があります。

集約基準
複数の事業セグメントが次の要件のすべてを満たす場合に、1つの事業セグメントに集約することができます。
(1)当該事業セグメントを集約することが、セグメント情報を開示する基本原則と整合していること
(2)当該事業セグメントの経済的特徴が概ね類似していること
(3)当該事業セグメントの次のすべての要素が概ね類似していること
①製品及びサービスの内容
②製品の製造方法又は製造過程、サービスの提供方法
③製品及びサービスを販売する市場又は顧客の種類
④製品及びサービスの販売方法
⑤銀行、保険、公益事業等のような業種に特有の規制環境

量的基準
次の量的基準のいずれかを満たす事業セグメントを報告セグメントとして開示します。
(1)売上高(事業セグメント間の内部売上高又は振替高を含む。)がすべての事業セグメントの売上高の合計額の10%以上であること
(2)利益又は損失の絶対値が、すべての事業セグメントの利益の合計額又は損失の合計額の絶対値のいずれか大きい額の10%以上であること
(3)資産が、すべての事業セグメントの資産の合計額の10%以上であること
量的基準のいずれにも満たない事業セグメントを、報告セグメントとして開示することもできます。
報告セグメントの外部顧客への売上高の合計額が連結損益計算書又は個別損益計算書の売上高の75%未満である場合には、損益計算書の売上高の75%以上が報告セグメントに含まれるまで、事業セグメントを追加する必要があります。

固定資産の減損に係るグルーピングとの関係
固定資産の減損に係る会計基準の適用指針の第73項に「連結財務諸表における資産グループは、どんなに大きくても、事業の種類別セグメント情報における開示対象セグメントの基礎となる事業区分よりも大きくなることはないと考えられる」とあります。そのため、固定資産の減損の検討における資産グループはセグメントより大きくならないと解釈できます。

【参考】企業会計基準委員会 企業会計基準第17号
セグメント情報等の開示に関する会計基準

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確定申告における還付について

確定申告における還付についてご説明します。確定申告における還付は、税務署からお知らせがあるわけではありませんので、ご自身で判断して対応する必要があります。

還付申告とは
給与や報酬等から源泉徴収された所得税額が本来納める所得税額よりも多い場合に、確定申告を行い、納め過ぎた所得税の還付を受ける行為をいいます。
還付申告は、過去5年間にわたり請求が可能です。

所得税の還付を受けることができるケース
・年の途中で会社を退職したため、年末調整を受けられずに源泉徴収税額が納め過ぎとなっている場合
・一定の要件のマイホームを取得して、住宅ローン控除の適用を受ける場合
・マイホームに特定の改修工事をし、特定増改築等住宅借入金等特別控除の適用を受ける場合
・認定住宅新築等特別税額控除の適用を受ける場合
・災害や盗難などで資産に損害を受け、雑損控除の適用を受ける場合
・特定支出控除の適用を受ける場合
・医療費控除、セルフメディケーション税制の適用を受ける場合
・ふるさと納税を含む、寄附金控除の適用を受ける場合
・上場株式等に係る譲渡損失の金額を申告分離課税を選択した上場株式等に係る配当所得等の金額から控除する場合

給与所得者は勤務先の会社で年末調整が行われ、確定申告は不要となりますが、所得控除のうち住宅ローン控除の適用初年度、雑損控除、特定支出控除、医療費控除等の適用を受けるためには、確定申告が必須となりますので、ご注意ください。

【参考】国税庁:還付申告

関連コラム:ふるさと納税制度の概要と節税効果について

関連当事者の範囲及び取引の開示について

関連当事者の開示に関する会計基準及び関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針についてご説明します。

関連当事者との取引は、通常の第三者との取引条件とは異なった条件で行われる可能性が高く、関連当事者の存在が会社の財務状況や業績に重要な影響を与える可能性があるため、関連当事者との取引や関連当事者の存在を適切に情報開示することが本会計基準の趣旨です。

関連当事者の範囲
①親会社
②子会社
③財務諸表作成会社と同一の親会社をもつ会社
④財務諸表作成会社が他の会社の関連会社である場合における当該他の会社
⑤関連会社及び当該関連会社の子会社
⑥財務諸表作成会社の主要株主(自己又は他人名義で議決権の10%以上を保有)及びその近親者
⑦財務諸表作成会社の役員及びその近親者
⑧親会社の役員及びその近親者
⑨重要な子会社の役員及びその近親者
⑩⑥から⑨に掲げる者が議決権の過半数を自己の計算において所有している会社及びその子会社
⑪従業員のための企業年金(企業年金と会社の間で掛金の拠出以外の重要な取引を行う場合に限ります。)
なお、連結財務諸表上は、連結子会社を除き、個別財務諸表上は、重要な子会社の役員及びその近親者並びにこれらの者が議決権の過半数を自己の計算において所有している会社及びその子会社を除きます。

開示対象外の取引
役員に対する報酬、賞与及び退職慰労金の支払いは、開示対象外となります。

関連当事者の概要
関連当事者の概要には、名称又は氏名のほか、以下の内容を記載します。
(1)関連当事者が法人の場合には、所在地、資本金、事業の内容及び当該関連当事者の議決権に対する会社の所有割合又は財務諸表作成会社の議決権に対する当該関連当事者の所有割合
(2)関連当事者が個人の場合には、職業、財務諸表作成会社の議決権に対する当該関連当事者の所有割合

貸倒懸念債権及び破産更生債権等
関連当事者に対する債権が貸倒懸念債権及び破産更生債権等に該当する場合、以下の項目を開示します。
(1)債権の期末残高に対する貸倒引当金残高
(2)当期の貸倒引当金繰入額等
(3)当期の貸倒損失額

資金貸借取引、債務保証等及び担保提供又は受入れ
資金貸借取引、債務保証等及び担保提供又は受入れについて開示する場合には、以下の内容を記載します。
(1)資金貸借取引
資金の貸付取引又は借入取引がある場合、当期中の貸付金額又は借入金額を取引金額として記載し、当該取引の期末残高を記載します。
(2)債務保証等
保証債務等(被保証債務等)の期末残高を取引金額として記載します。
(3)担保提供又は受入れ
担保資産に対応する債務の期末残高を取引金額として記載します。

関連当事者の存在
親会社情報として、親会社の名称及び上場又は非上場の別を開示します。

重要性の判断基準
会社と関連当事者との取引のうち、重要な取引が開示対象となり、重要性の判断基準は以下の様になっています。
(連結)損益計算書項目に属する科目に係る関連当事者との取引
①売上高、売上原価、販売費及び一般管理費
売上高又は売上原価と販売費及び一般管理費の合計額の10%を超える取引
②営業外収益、営業外費用
営業外収益又は営業外費用の合計額の10%を超える損益に係る取引
③特別利益、特別損失
1,000万円を超える損益に係る取引

(連結)貸借対照表項目に属する科目の残高及びその注記事項に係る関連当事者との取引並びに債務保証等及び担保提供又は受入れ
①総資産の1%を超える取引
②資金貸借取引、有形固定資産や有価証券の購入・売却取引等について、取引の発生総額が総資産の1%を超える取引
③事業の譲受又は譲渡について、総資産の1%を超える取引

関連当事者が個人の場合
関連当事者が個人の場合、(連結)損益計算書項目及び(連結)貸借対照表項目等のいずれに係る取引についても、1,000万円を超える取引については、すべて開示対象となります。

【参考】企業会計基準委員会 企業会計基準第11号
関連当事者の開示に関する会計基準

【参考】企業会計基準委員会 企業会計基準適用指針第13号
関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針

開示書類に関するお問い合わせはこちらのフォームからお願い致します。

M&Aの手法・法的形態について

M&Aには様々な手法・法的形態がありますので、その種類についてご説明します。
買収という言葉は、一般的に他社の株式の取得や合併を意味していますが、法律用語ではありません。
M&Aに関し、代表的な組織再編手法である株式取得、合併、会社分割、事業譲渡について、以下で触れていきます。

株式譲渡
株式譲渡は、被買収企業の発行済株式を持つ株主が、買収企業にその株式を譲渡する方法です。
株式譲渡が行われると、株主が変わり、一般的に社長を含む役員が入れ替えられますが、会社の事業、社名、取引先、顧客等は変わらず、事業運営に関しては外部からの見た目は変わりません。

合併
合併は、複数の会社が1つの会社になる組織再編手法です。合併には、吸収合併と新設合併があります。吸収合併と新設合併では、既存の会社に統合されるか、新しく会社を設立して統合するかの違いがあります。
吸収合併:会社が他の会社とする合併であって、合併により消滅する会社の権利義務の全部を合併後存続する会社に承継させるものをいう。
新設合併:2以上の会社がする合併であって、合併により消滅する会社の権利義務の全部を合併により設立する会社に承継させるものをいう。

会社分割
会社分割は、会社の事業に関して有する権利義務の全部または一部を他の会社に承継させる組織再編手法です。吸収分割と新設分割があり、会社の一部を切り出して、その切り出した事業の権利義務を包括的に他の会社に引き継がせるか、新しい会社を作って引き継がせるかに違いがあります。
吸収分割:株式会社または合同会社がその事業に関して有する権利義務の全部または一部を分割後他の会社に承継させることをいう。
新設分割:1または2以上の株式会社または合同会社がその事業に関して有する権利義務の全部または一部を分割により設立する会社に承継させることをいう。

事業譲渡
事業譲渡とは、会社の事業の全部または一部を売買する手法です。吸収分割との相違は、必要な事業だけを譲渡するため、事業に関して有する権利義務が包括的に承継されないことです。そのため、事業譲渡では、買手側では不要な資産や簿外負債を引き受けるリスクを回避できる一方、譲渡対象となる個々の資産の名義替えや契約を再契約する必要があるため、手続が煩雑になります。

上記の他、以下のような手法が用いられます。
株式交換
株式交換は、自社株式を対価として他社の株式を引受け、他社を100%子会社化する手法です。

株式移転
株式移転は、1社または2以上の会社が親会社となる会社を設立し、その新会社の株式と傘下となる株式を交換する持株会社を中心とする企業グループを形成する手法です。

第三者割当増資
第三者割当増資は、会社が新たに株式を発行し、特定の第三者に株式を引き受ける権利を割り当てる手法です。

TOB(株式公開買付)
TOB(株式公開買付)は、Take Over Bidの略語で、株式市場で不特定多数の株主から買い取り、支配権を獲得する手法です。

どの手法を使うべきか、どの手法を使うのが有利かはケースバイケースです。

関連コラム:M&A戦略・M&Aの実施目的について

【参考】経済産業省:中小M&Aハンドブック