減価償却費の損金算入限度額

固定資産を取得した場合、その取得価額を一度に費用計上するのではなく、耐用年数に応じて配分するのが減価償却です。しかし、会計上計上した減価償却費がそのまま税務上も認められるとは限りません。法人税法では、損金算入限度額が定められており、この範囲内でのみ損金算入が可能となります。

1.損金算入限度額の概要
減価償却費の損金算入限度額とは、税務上認められる減価償却費の上限額です。
この限度額は、取得価額、耐用年数、償却方法(定額法・定率法)に基づいて計算されます。

2.会計と税務の関係
会計上は企業が任意の償却方法を採用できますが、税務上は法定の方法・償却率に基づく必要があります。そのため、会計:任意、税務:制限あり、という違いが生じます。

3.超過額・不足額の取扱い
(1)償却超過額
会計上の償却費が限度額を超える場合、超過部分は損金不算入となり、税務上は否認されます。

(2)償却不足額
一方、会計上の償却費が限度額未満の場合、不足分は損金算入できない(損金経理が要件)点に注意が必要です。

4.実務上の重要ポイント
(1)任意償却の性質
減価償却費は、計上した範囲でしか損金算入できないため、意図的に償却を抑えると節税機会を失うことになります。

(2)少額資産の特例
一定の要件を満たす場合、30万円未満の資産は一括損金算入が可能です(中小企業等)。

(3)耐用年数の見直し
中古資産などでは、合理的な耐用年数の設定が重要となります。

減価償却費の損金算入は、税務上の限度額があり、超過も不足も最終的には会計と税務の一致時点では解消するという特徴があります。

減価償却は、やらないと損になる数少ない費用です。
減価償却はキャッシュアウトを伴わない節税手段であり、適切に活用することで税負担をコントロールすることが可能です。会計と税務の違いを理解し、戦略的に運用することが重要といえるでしょう。

【参考】国税庁:減価償却のあらまし

関連コラム:修繕費と資本的支出の判断

関連コラム:中古資産の耐用年数

関連コラム:少額減価償却資産と一括償却資産

確定申告における還付について

確定申告における還付についてご説明します。確定申告における還付は、税務署からお知らせがあるわけではありませんので、ご自身で判断して対応する必要があります。

還付申告とは
給与や報酬等から源泉徴収された所得税額が本来納める所得税額よりも多い場合に、確定申告を行い、納め過ぎた所得税の還付を受ける行為をいいます。
還付申告は、過去5年間にわたり請求が可能です。

所得税の還付を受けることができるケース
・年の途中で会社を退職したため、年末調整を受けられずに源泉徴収税額が納め過ぎとなっている場合
・一定の要件のマイホームを取得して、住宅ローン控除の適用を受ける場合
・マイホームに特定の改修工事をし、特定増改築等住宅借入金等特別控除の適用を受ける場合
・認定住宅新築等特別税額控除の適用を受ける場合
・災害や盗難などで資産に損害を受け、雑損控除の適用を受ける場合
・特定支出控除の適用を受ける場合
・医療費控除、セルフメディケーション税制の適用を受ける場合
・ふるさと納税を含む、寄附金控除の適用を受ける場合
・上場株式等に係る譲渡損失の金額を申告分離課税を選択した上場株式等に係る配当所得等の金額から控除する場合

給与所得者は勤務先の会社で年末調整が行われ、確定申告は不要となりますが、所得控除のうち住宅ローン控除の適用初年度、雑損控除、特定支出控除、医療費控除等の適用を受けるためには、確定申告が必須となりますので、ご注意ください。

【参考】国税庁:還付申告

関連コラム:ふるさと納税制度の概要と節税効果について

中小企業倒産防止共済制度を利用した節税

中小企業倒産防止共済制度の概要と当該制度を利用した節税をご説明します。中小企業倒産防止共済制度は損金算入でき、役員の退職金の支給時に取り崩す等で、中小企業で多額に利益が出ている場合の節税商品、簿外の貯蓄効果のある商品として一般的に使われています。

中小企業倒産防止共済制度は独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営している共済制度で、経営セーフティ共済とも呼ばれます。

中小企業倒産防止共済制度の概要について
取引先企業が倒産した場合に、中小企業の連鎖倒産や経営難になるのを防ぐため、無担保・無保証人で掛金総額の10倍の範囲内(最高8,000万円)で回収困難な売掛債権等の額以内の共済金の貸付けが受けられる制度です。

加入要件
加入要件は、業種に応じて「資本金の額または出資の総額」及び「常時使用する従業員数」が異なります。
以下にいくつか例示します。
製造業、建設業、運輸業その他の業種:資本金の額は3億円以下、従業員数は300人以下
卸売業:資本金の額は1億円以下、従業員数は100人以下
サービス業:資本金の額は5,000万円以下、従業員数は100人以下
小売業:資本金の額は5,000万円以下、従業員数は50人以下

中小企業倒産防止共済制度のメリットについて
月々の掛金は5,000円~20万円まで自由に選べ、加入後も増額・減額できます。確定申告の際、掛金を法人では損金、個人事業主では必要経費に算入でき、節税効果を得ることができます。
年間240万円まで全額損金計上でき、合計積み立て限度額800万円までの枠を節税として利用し、それでも節税しきれない場合に法人保険を利用する節税がおすすめです。

中小企業倒産防止共済を解約した場合に、解約手当金を受け取れます。
自己都合では、掛金を12か月以上納めていれば掛金総額の8割以上が解約手当金として受け取れます。また、40か月以上納めていれば、掛け金全額を解約手当金として受け取れます。12か月未満は掛け捨てとなるため、40か月以上の納付を行うべきです。
解約手当金は、受領時に益金算入されてしまいます。そのため、節税の観点では多額の費用が発生する場合に、解約手当金を受領し、収益と費用を相殺することに使用すると良いです。
多額の修繕費や役員退職金を支給する際、期限切れの繰越欠損金を利用する場合等が該当します。

【参考】独立行政法人中小企業基盤整備機構:経営セーフティ共済

関連コラム:小規模企業共済制度の概要とメリット

小規模企業共済制度の概要とメリット

中小企業経営者や個人事業主の節税に役立つ小規模企業共済制度についてご説明します。支払いはすべて所得控除となり、解約手当金は退職所得として低税率で戻せるため、小規模事業者の節税にはおすすめのものです。

小規模企業共済は独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営している共済制度です。

小規模企業共済の加入要件
加入要件は以下の1~6のいずれかに該当する場合です。
1.建設業、製造業、運輸業、サービス業(宿泊業・娯楽業に限る)、不動産業、農業などを営む場合は、常時使用する従業員の数が20人以下の個人事業主または会社等の役員
2.商業(卸売業・小売業)、サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)を営む場合は、常時使用する従業員の数が5人以下の個人事業主または会社等の役員
3.事業に従事する組合員の数が20人以下の企業組合の役員、常時使用する従業員の数が20人以下の協業組合の役員
4.常時使用する従業員の数が20人以下であって、農業の経営を主として行っている農事組合法人の役員
5.常時使用する従業員の数が5人以下の弁護士法人、税理士法人等の士業法人の社員
6.上記「1」と「2」に該当する個人事業主が営む事業の経営に携わる共同経営者(個人事業主1人につき2人まで)

小規模企業共済制度のメリット
月々の掛金は1,000円~70,000円まで500円単位で設定可能で、加入後も増額・減額できます。確定申告時に、全額を所得控除でき、節税効果を得ることができます。

掛金納付期間に応じ最大120%相当額を返戻金として受け取ることができ、また、解約手当金は、個人事業主の場合は退職所得になるため、事業所得や給与所得に比べて税負担が大幅に軽くなります。

契約者貸付制度があり、積み立てている金額の範囲内で共済から資金の借入が可能です。

小規模企業共済の留意点
掛金納付月数が240ヵ月(20年)未満の場合には、解約手当金が元本割れとなため、240ヵ月(20年)以上の掛金納付を前提とするのが望ましいです。

加入要件を満たしている時に小規模企業共済に加入すれば、続けることは可能ですが、事業規模が加入要件を超えてしまうと、加入できなくなってしまいます。事業規模が大きくなる前に加入を検討してください。

【参考】独立行政法人 中小企業基盤整備機構 小規模企業共済 掛金について

関連コラム:中小企業倒産防止共済制度を利用した節税

ふるさと納税制度の概要と節税効果について

ふるさと納税の制度概要
ふるさと納税は、自分の選んだ市町村に寄附を行い、その寄附額のうち2,000円を越える部分について、一定の上限金額まで所得税及び翌年の住民税から原則として全額が控除される制度です。

節税メリット
返礼品を用意している市町村に寄附をした場合には、2,000円を自己負担して実質的に所得税及び住民税の前払いを行うことで、返礼品を取得できます。現時点で還元率の良い市町村へ寄付をした場合に、実質負担額2,000円を超える返礼品を入手できるため、キャッシュではなくモノとなりますが、個人の節税メリットがあります。また、地方の名産品として高級な食材、地酒、商品券、旅行券、ゴルフ券等様々な返礼品が用意されています。
本来は、自分の生まれ故郷を盛り上げるためにできた制度ですが、市町村のふるさと納税獲得競争(返礼品競争)が過熱しています。総務省が、高額な返礼品を規制するような方針を打ち出そうとしており、還元率の良い返礼品を取得できるうちにふるさと納税を実施しておくべきです。

税額控除限度額の算定方法
ふるさと納税額の税額控除限度額は以下の算式で算定されます。
・所得税
控除額=(ふるさと納税額-2,000円)×所得税率×1.021
※総所得額等の40%が上限
・住民税基本分
控除額=(ふるさと納税額-2,000円)×住民税率10%
※総所得額等の30%が上限
・住民税特例分
控除額=(ふるさと納税額-2,000円)×(100%-基本分10%-所得税率×1.021)
※住民税所得割額の20%が上限
なお、復興特別所得税を加えた税率で算出します。

税額控除を受けるための手続
ふるさと納税の寄附金について、税額控除を受けるためには、原則寄附をした年度の確定申告を行う必要があります。
しかし、ふるさと納税先の自治体数が5団体以内である場合で、そもそも確定申告の不要な給与所得者であれば、ふるさと納税を行った各自治体に申請することで完結し、確定申告が不要となるふるさと納税ワンストップ特例制度が設けられています。
なお、以下の方は、ふるさと納税ワンストップ特例制度の対象外となり、確定申告が必要となりますのでご注意ください。
・自営業
・6か所以上の自治体へふるさと納税をした会社員や公務員
・住宅ローン控除の初年度や医療費控除で確定申告が必要な方

住宅ローン控除やその他の所得控除や税額控除を併用している場合には、ふるさと納税の税額控除限度額が小さくなりますので、限度額のシミュレーションをしっかりと実施してください。

【参考】総務省:ふるさと納税

関連コラム:確定申告における還付について