小規模企業共済制度の概要とメリット

中小企業経営者や個人事業主の節税に役立つ小規模企業共済制度についてご説明します。支払いはすべて所得控除となり、解約手当金は退職所得として低税率で戻せるため、小規模事業者の節税にはおすすめのものです。

小規模企業共済は独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営している共済制度です。

小規模企業共済の加入要件
加入要件は以下の1~6のいずれかに該当する場合です。
1.建設業、製造業、運輸業、サービス業(宿泊業・娯楽業に限る)、不動産業、農業などを営む場合は、常時使用する従業員の数が20人以下の個人事業主または会社等の役員
2.商業(卸売業・小売業)、サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)を営む場合は、常時使用する従業員の数が5人以下の個人事業主または会社等の役員
3.事業に従事する組合員の数が20人以下の企業組合の役員、常時使用する従業員の数が20人以下の協業組合の役員
4.常時使用する従業員の数が20人以下であって、農業の経営を主として行っている農事組合法人の役員
5.常時使用する従業員の数が5人以下の弁護士法人、税理士法人等の士業法人の社員
6.上記「1」と「2」に該当する個人事業主が営む事業の経営に携わる共同経営者(個人事業主1人につき2人まで)

小規模企業共済制度のメリット
月々の掛金は1,000円~70,000円まで500円単位で設定可能で、加入後も増額・減額できます。確定申告時に、全額を所得控除でき、節税効果を得ることができます。

掛金納付期間に応じ最大120%相当額を返戻金として受け取ることができ、また、解約手当金は、個人事業主の場合は退職所得になるため、事業所得や給与所得に比べて税負担が大幅に軽くなります。

契約者貸付制度があり、積み立てている金額の範囲内で共済から資金の借入が可能です。

小規模企業共済の留意点
掛金納付月数が240ヵ月(20年)未満の場合には、解約手当金が元本割れとなため、240ヵ月(20年)以上の掛金納付を前提とするのが望ましいです。

加入要件を満たしている時に小規模企業共済に加入すれば、続けることは可能ですが、事業規模が加入要件を超えてしまうと、加入できなくなってしまいます。事業規模が大きくなる前に加入を検討してください。

【参考】独立行政法人 中小企業基盤整備機構 小規模企業共済 掛金について

関連コラム:中小企業倒産防止共済制度を利用した節税

ふるさと納税制度の概要と節税効果について

ふるさと納税の制度概要
ふるさと納税は、自分の選んだ市町村に寄附を行い、その寄附額のうち2,000円を越える部分について、一定の上限金額まで所得税及び翌年の住民税から原則として全額が控除される制度です。

節税メリット
返礼品を用意している市町村に寄附をした場合には、2,000円を自己負担して実質的に所得税及び住民税の前払いを行うことで、返礼品を取得できます。現時点で還元率の良い市町村へ寄付をした場合に、実質負担額2,000円を超える返礼品を入手できるため、キャッシュではなくモノとなりますが、個人の節税メリットがあります。また、地方の名産品として高級な食材、地酒、商品券、旅行券、ゴルフ券等様々な返礼品が用意されています。
本来は、自分の生まれ故郷を盛り上げるためにできた制度ですが、市町村のふるさと納税獲得競争(返礼品競争)が過熱しています。総務省が、高額な返礼品を規制するような方針を打ち出そうとしており、還元率の良い返礼品を取得できるうちにふるさと納税を実施しておくべきです。

税額控除限度額の算定方法
ふるさと納税額の税額控除限度額は以下の算式で算定されます。
・所得税
控除額=(ふるさと納税額-2,000円)×所得税率×1.021
※総所得額等の40%が上限
・住民税基本分
控除額=(ふるさと納税額-2,000円)×住民税率10%
※総所得額等の30%が上限
・住民税特例分
控除額=(ふるさと納税額-2,000円)×(100%-基本分10%-所得税率×1.021)
※住民税所得割額の20%が上限
なお、復興特別所得税を加えた税率で算出します。

税額控除を受けるための手続
ふるさと納税の寄附金について、税額控除を受けるためには、原則寄附をした年度の確定申告を行う必要があります。
しかし、ふるさと納税先の自治体数が5団体以内である場合で、そもそも確定申告の不要な給与所得者であれば、ふるさと納税を行った各自治体に申請することで完結し、確定申告が不要となるふるさと納税ワンストップ特例制度が設けられています。
なお、以下の方は、ふるさと納税ワンストップ特例制度の対象外となり、確定申告が必要となりますのでご注意ください。
・自営業
・6か所以上の自治体へふるさと納税をした会社員や公務員
・住宅ローン控除の初年度や医療費控除で確定申告が必要な方

住宅ローン控除やその他の所得控除や税額控除を併用している場合には、ふるさと納税の税額控除限度額が小さくなりますので、限度額のシミュレーションをしっかりと実施してください。

【参考】総務省:ふるさと納税

関連コラム:確定申告における還付について

不動産所得の概要と留意点

不動産所得の概要
所得税計算上における不動産所得は、以下の資産の貸付から生じる不動産収入をいいます。
・土地や建物などの不動産の貸付け
・地上権など不動産の上に存する権利の設定及び貸付け
・船舶や航空機の貸付け

不動産所得の金額は、以下のように計算します。
総収入金額-必要経費=不動産所得の金額
総収入金額は、貸付けによる賃貸料収入の以外に、名義書換料、承諾料、更新料又は頭金などの名目で受領するもの、敷金や保証金で返還を要しないもの、共益費などの名目で受け取るものが含まれます。

必要経費は、不動産収入を得るために直接必要な費用のうち家事上の経費と明確に区分したものであり、固定資産税、損害保険料、減価償却費、修繕費が該当します。

事業的規模に該当する不動産所得の計算
不動産所得は、その不動産貸付けが事業として行われているかによって、 所得金額の計算上の取扱いが異なる場合があります。
不動産の貸付けが事業かどうかは、原則として社会通念上事業と称するに至る程度の規模で行われているかにより判断しますが、建物の貸付けについては、アパート等については、室数がおおむね10室以上、家屋の貸付けについては、おおむね5棟以上であることが判断基準です。

事業的規模に該当する場合の不動産所得の計算上のメリット
・65万円の青色申告特別控除が不動産所得の金額から控除できますが、事業的規模にあたらない場合は、不動産所得の金額から控除できるのは10万円です。
・配偶者や親族が事業に従事している場合は、事業的規模であれば青色申告の専従者給与、白色申告の場合は専従者控除が適用されます。
・賃貸用の不動産の取り壊しなどで生じる資産損失を必要経費として計上でき、その結果生じた損失は他の所得との損益通算でき、純損失の場合には青色申告で3年間の繰越控除が適用されます。事業的規模でない不動産所得の場合には、必要経費に算入できる額は、取り壊しなどを行った年の不動産所得の総収入金額が限度になりますので、不動産所得金額を0円で申告するだけで損益通算はできません。
・回収不能の賃貸料が発生した場合、事業的規模では貸倒損失をその年度の必要経費に計上できます。

その他留意点
会社員は基本的に給与所得のみなので、年末調整で申告が完了します。しかし、不動産所得がある場合は、年末調整で取り扱ってもらえないため、所得や経費を計算して確定申告する必要があります。

【参考】国税庁:不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)

関連コラム:所得計算における損益通算

所得計算における損益通算

所得税法の損益通算についてご説明します。

概要
所得税法上、所得の種類は10種類に分類されています。
各所得金額の計算上生じた損失のうち一定のものについて、順序にしたがって、総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額等を計算する際に他の各所得金額の金額から控除できる制度です。

対象となる所得の種類
損益通算の対象となる所得は次の所得です。
(1)不動産所得(生活に通常必要でない資産の貸付け、負債の利子等を除く)
(2)事業所得
(3)譲渡所得(競走馬に係るもの以外で、生活に通常必要でない資産の譲渡を除く)
(4)山林所得

控除する順序
損益通算の順序は以下のようになっています。
①不動産所得、事業所得の金額の計算上生じた損失は、経常グループ内の所得から控除します。
経常グループ内の所得は、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、雑所得です。
②譲渡所得の金額の計算上生じた損失は、一時所得の金額から控除します。
③①及び②の損益通算でも控除しきれない損失がある場合には、①と②で所得が生じている側から損失が生じている側の金額を控除します。
④③においても控除しきれない損失があるときには、山林所得の金額から控除し、それでも控除しきれない損失があるときには退職所得の金額から控除します。
⑤山林所得の金額の計算上生じた損失は、①の経常グループから控除し、控除しきれない損失があるときには②の臨時グループから控除し、それでも控除しきれない損失があれば、退職所得の金額から控除します。

損益通算を行っても損失が生じる場合には、翌年以降3年間の純損失の繰越控除か純損失の繰戻還付を選択適用することとなります。

【参考】国税庁:損益通算

関連コラム:不動産所得の概要と留意点

債務確定主義

法人税法では、恣意性排除及び課税の公平性の確保する必要があるため、減価償却費を除く費用項目(売上原価、販売費及び一般管理費、損失の額)について債務確定主義を採用しています。債務確定主義では、法律上の裏付けによる権利・債務が確定した時点をもって計上を行います。発生主義では、収益・費用の発生を経済的事実に基づいて費用計上を行いますが、債務確定主義のように法律上の裏付けを必ずしも必要としません。
企業会計では期間損益計算を適正に行うため、将来発生することが見込まれる費用を引当金として見積計上しますが、債務確定主義を採用する法人税法では別段の定めを除き、損金の額に算入されません。

法人税法上、債務が確定しているものとは、以下の要件の全てに該当するものをいいます。
1.当該事業年度終了の日までに当該費用に係る債務が成立していること。
2.当該事業年度終了の日までに当該債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること。
3.当該事業年度終了の日までにその金額を合理的に算定することができるものであること。

債務確定主義と発生主義の相違点としては、賞与引当金及びその法定福利費の未払計上分が該当し、別表四で加算処理されます。

なお、所得税法においても、売上原価、販売費及び一般管理費はその年において債務が確定しているものに限るとされており、債務確定主義が採用されています。
所得税法上の確定債務は、以下の要件の全てに該当するものをいいます。
1.その年の12月31日までに債務が成立していること。
2.その年の12月31日までにその債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること。
3.その年の12月31日までに金額が合理的に算定できること。

【参考】国税庁:販売費、一般管理費その他の費用における債務確定の判定

関連コラム:法人設立時の提出書類